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「街並み修景フォーラム2019-この街が活きつづける理由-」を開催しました。


2019年3月16日「街並み修景フォーラム2019-この街が活きつづける理由-」と題し、

盛岡市大慈寺地区における取組みを通じ、歴史的街並み保存活用をテーマにフォーラムを開催しました。会場はもりおか町家物語館浜藤ホールです。

定員50名のところ満員となり、

地域住人の皆さま始め、地域活動団体、建築関係者等業者の方、行政の方、学生さん(高校生、大学生)など地域内外から広くお集まりいただきました。

■ 前半は、当法人と盛岡市の発表を通じてこれまでの取り組みをおさらいしました。

NPO法人盛岡まち並み塾の活動を通じて、盛岡市大慈寺地区の住民協働による街並み保存活用の取り組みの紹介。

盛岡市による取り組み(歴史的街並み保存活用基本計画、整備事業補助金及び歴史的風致所維持向上計画)について解説を行いました。

■ その後、市民・事業者による近年の改修事例に触れ、学びを深めました。

① 「松田家菓子舗」

代々老舗菓子店を営む店舗である盛岡町家を、住人が補助金制度を活用して修景・改修活用した事例の紹介。

 /「桂汎用工房」脇田桂一郎 氏

建物改修にあたり、調査の段階で見られる建物が歩んだ歴史の過程、家主さんの建物に対する愛着や思い溢れるエピソードを、改修過程の写真とともにご紹介していただきました。

建物の設計の前に、まずは丁寧に調査を行い、歴史を重ねた建物の状態を熟知した上で、これからの時代にも対応できる新しい設備をどう取り入れていくか慎重に検討する様子、

時を重ねた建物の重みと、そこで過ごしてきた持ち主さんの想いを大切に、これからに繋ぐための丁寧な仕事ぶりを知ることができる、大変貴重な機会となりました。

② 「旧かわてつ園」

 外部から旧店舗を地域住人から賃貸し、自費により改修して工房兼店舗として活用した事例の紹介。

/「some-mono佐々木龍大」佐々木龍大 氏

この界隈に魅力を感じ、地域関係者との出会いの中で、空き店舗となっていたペットショップの建物に巡り合い、水槽だった大きな流し場のある建物に一目ぼれした佐々木さんは、染物工房兼店舗をオープンしました。工房の引っ越しから内部の改修を経て、本格オープンまで1年を費やしました。

よそから来たものとして、地域の方にまず自分自身の存在をゆっくり知ってもらう事を大切にし、

1年間という時間をかけ徐々に地域と触れ合う段階を大事に育てたという、

歴史ある地域との出会いと関わり方のエピソードをご紹介いただきました。

③「旧和田酒店」

不動産業として地域住人から旧店舗を取得、修景・改修し賃貸物件として活用する事例の紹介。

/「三田農林株式会社」三田林太郎 氏

元々ご縁があった家主さんから、酒屋だった建物について相談を受けた三田さん。

江戸と明治の名残がある建物には、時代の経過により必要を伴う修理工事、その建物の活用に向けての改修工事をそれぞれに、丁寧に行う必要がありました。

そして、事業としてどう展開していくべきかを検討する中、繋がる出会いによりゲストハウス開業という展開が生まれ、賃貸物件として取得する決意に至ったそうです。

歴史を重ねた建物とは、これまで住まわれた方の嬉しいこと、悲しいこと、様ざまを経て現在に或るもの。そこに敬意をはらいお祓い等を行った後工事にかりました。

建物取得後、片付けから工事過程での苦労話と、今後開業予定のゲストハウスの具体的な計画についてご紹介いただきました。

デザインに比重を置いた工事に取り掛かるのではなく、まずは建物を開けてみて中を見る、そして歴史を重ねたことで伴う建物の痛みの修理を丁寧に行ってから次の段階に進むこと。

人との関わり方、建物との関わり方、両方に共通することですが、

現代とそしてこれからの時代にあり続けるために必要な、“当たり前”の誠実さに触れることができるお話しでした。

■ 後半は、紹介者と来場者とのクロストークを実施し、これからを語り合いました。

歴史的建物の実際の住まい手、使い手の方の視点から。

・冬の寒さが厳しい。何か工夫や気を付ける点はあるか。

・歴史的建造物の改修は100年経過後の物件でも30年に一度改築がなされ、

 その 都度の知恵や工夫が施されている。現代なら断熱材が発達し、利用するのが良い。

・補助事業を活用して盛岡町家の自宅を改修した。

 傾きの改善、寒さの改善がされ快適に過ごしている。

・菓子店を改修し、その後見学に来た学生が「こういう工房でモノづくりを行いたい」とか

「2階も見学させてほしい」などの声を掛けられ満足している。

授業や活動でこの街に関わりのある大学生の視点から。

・地域の人たちの取り組みに感銘を受けた。自分も盛岡町家に移り住みたいが、

 地域にルーツのない人間が町家で暮らすにはどうしたらよいか。

・「自分が本気でここに住みたい」という意思を強くもち、発信し続ければ、人のつながりから

  チャンスを得られるのではないか。

・「よそものが勝手な事をやる」というイメージを持たれることだけは避けたいと思い、

  地域との丁寧な関わり方を心掛けた。

界隈の歴史的建物の改修に携わる建築関係者の視点から。

・大工として100年前の建物を改修できることに魅力を感じる。これに現代の技術が加わることで

 ますます魅力的なものになっていく。建物だけでなく、大工という仕事も後世に残していかなけれ

 ばならない。地域に大工が常駐し、住民が気軽に相談に行ける地域となることを夢見ている。

・街並みを残していくだけではなく、どうしたら地域に人が来てお金を落としてくれるか

 といく事も考えるべき。その両輪のまちづくりを進めていき、次世代に繋げていかなければならな

 いと感じる。イベントの首都圏への周知も積極的に行うことも大切と感じる。

界隈の魅力について、地域住人と高校生の視点から。

・共同井戸の管理組合の世話人を長年務めている。井戸を使っても使わなくても組合費を文句ひとつ

 言わずに払ってくれている方の多さに驚く。地域の誇りとする義理人情がある。

 自分が井戸掃除ができない時には助けてくれる人も多く、古くからのものを大切に考えている住人

 が多い地域であることを誇りに思う。

・長く地域を離れ戻ってきた人間だが、戻る前から積極的に地域活動に参加し馴染んでいった。

 何気なく使っていた井戸を管理(清掃)してくれている人がいる事を知り引き継ぐこととなった。

 誰かがやるから美味しい水が飲めるわけで、義務的なことと思っていない。

 このような素晴らしい水がある事を子供たちにも伝えていきたい。

・数十年前東京から界隈に嫁いだ。東京に帰る際は友人や知合に盛岡へ遊びに行くよう宣伝する。

 盛岡、この界隈はとっても素敵なところであり、住んでいる方々の認識、自覚、ほこりが

 当たり前のようにあるがもっともっと自己発信して良い。もったいないと感じるほどだ。

・高校の事業で「てどらんご」(※年2回開催される手作り市イベント)などイベントに参加する中で、

 地域の人同士の深い繋がりの良さを感じた。もともと住んでいる人たちが苦手とする分野で、

 自分達若者しかできないことがあるのであれば今後も協力していきたい。

国土交通省関係者の方の視点から。

・今回外部から参加したものとして見るこの地域の魅力は、古い街並みが面的に残っているエリアで

 あるということ。面的というのは街並みの連続性ということだけではなく、舟橋の「渡し」のよう

 に、点在する歴史的建造物を繋ぐ人がいて、点から線に、線から面になっている。

 朽ちてきた建物をなおすのは本当に大変なこと。それを成し遂げてきたこの地域の人たちは想像力

 を持っている。

 そして、この街がこれからも残っていくことで働かせていただきたいもう一つの想像力がある。

 防災についてである。隣家との距離がほとんどないこの地域で、火事や地震が起きたらどのような

 段取りを踏む必要があるか、美しい街並みを守るために、事前に想定しておく事が必要である。

ご参加いただきました皆様の多様な視点を持ち寄ることで、歴史的街並み保存活用について

知り、感じ、考える時間が生まれました。この街の過去、現在、未来に触れられる時間でした。

盛岡市大慈寺地区、この街が活きつづける理由には、どの地域にも通じるヒントが溢れていると感じます。今後の活動の課題も垣間見える会となりました。

「街並み修景フォーラム2019-この街が活きつづける理由-」開催にあたりご協力いただきました皆様、ご来場いただきました皆様ありがとうございました。

※参考:イベントは終了しています。


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